日本義歯ケア学会理事長就任のご挨拶

                               2020年6月

                          河 相 安 彦
(日本大学松戸歯学部・有床義歯補綴学講座)

 日本義歯ケア学会は1999年に設立された軟質義歯裏装研究会が発展し,2009年に設立された学会です。現在,会員は大学関係者,開業歯科医師,関連業者の特別会員を含め,100名程度の小さな学会です。その分,小回りの利く風通しの良い学会でもあります。遡ると軟質義歯裏装研究会の前身はデンチャープラークコントロール研究会でもありました。「軟質義歯裏装材」も「デンチャープラークコントロール」も当時のメイン学会ではほぼ取り上げられることのないテーマでありました。このように,本学会のDNAは義歯補綴の教科書などで触れていないことを主題とし,研究会として設立し研鑽を重ねる傾向があります。日本義歯ケア学会も,「義歯ケア」というあまり陽の当たらない,しかし重要なテーマを先取りし,真摯に突き詰めていると言えるでしょう。
 本学会の年間活動計画は,年1回の学術大会,学会誌であるプロシーディングの発刊,最新ガイドラインの作成,科学研究費の申請と大学の枠を超えた共同研究などなどです。先に述べたように,大きな学会では中々達成できないマルチセンターの研究など,フットワーク軽く実施しています。近年ですと,10大学が参加した義歯安定剤の多施設研究が挙げられ,グローバルなエビデンスとして5編の論文が創出されました。
 今時代は,CureからCareに移行し,疾患型から予防型の時代です。義歯で言えば,欠損に代表される疾患型の治療から,高齢者の多様性に対応する,疾病型の対応へ舵を切らなければならないとも言えるでしょう。それには,モノフェーズな義歯の治療理論に加え,患者や,家族,介護者の背景を熟知した上での臨床判断に基づく「義歯治療」から「義歯ケア」へのパラダイムシフトが必要です。また,高齢者の歯科受診率が,一定年代から激減するのは,その受け皿の準備できていないことを示唆しています。地域包括が重要と言われる中,狭義では歯科と歯科との連携,歯科医師と歯科衛生士の連携も重要です。日本義歯ケア学会は,先取りのDNAを有す小回りの効く学会として,高齢者の疾病に対する姿を,義歯のケアを通じて,産業,学識者,臨床家,患者(産学臨患)で考究していかなければなりません。次の学術大会は20202月に東京で開催されます,多くの皆様のご参加をお待ちしております。